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信じがたい光景だった。走行を直前に控え、富士スピードウェイのピットで集中力を高めているのは、'98年にヒョコッとスポット参戦した日本GP予選で2番手グリッドを奪い取った難波恭司さんである。その難波さんに4、5歳の男の子がツカツカと歩み寄り、「頑張れよ」といった様子でヘルメットをペチペチ叩いたのである。
かつて全日本ロード250ccクラスに参戦していた難波さんに、走行前に話しかけるなど絶対不可能100%ムリ、速やかにお引き取りください状態だった。それぐらい張り詰めていたのだ。しかし男の子にペチペチされた'07年の難波さんは、気にする風でもなく、ごく普通に受け流していた。
実はこのペチペチ、9年ぶりにスプリントレースに出場する難波さんにとって狙い通りのシーンだった。「レースは、トップをめざして張り詰めるだけのものではない。仲間たちと一緒に楽しめるレースもある」と、難波さんは考えているのだ。
「ヨーロッパでは、大人の趣味として楽しむレースが盛んに行われているんだ」と難波さん。「いいオッサンたちがピカピカにしたマシンで楽しんでいる。そういうレースが増えることが、モータースポーツ文化が日本に定着するために必要なんじゃないかな」
難波さんのピットは、確かに明るかった。別クラスに参戦しているYSP富士吉田の小沢淳店長、そして元全日本チャンピオン・藤原儀彦さんの長男、翔平くんと共同で借りたピットは、老若男女多くの人々がワサワサと出入りし、何かとガヤガヤ盛り上がり、笑い声が絶えることはなかった。
みんなが楽しめるレースもある――。男の子にペチペチされながら、難波さんはそのことを体現していた。
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YZF-R1はキットパーツ(マフラー+レーシングECU+ハーネス)とカウルを組んだだけのほぼストック状態。 |
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YSP富士吉田・小沢淳店長の力走。「安全でストレスなく楽しめる」とサーキット走行にハマっている。 |
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難波さんとお手伝いのメカニック2人という完全プライベート体制。操作系を軽くすることに徹底的にこだわった。 |
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予選でポールポジションを獲得。グリッドでの難波さんは、さすがに張り詰めた様子を見せた。本人は「そんなことないよ」と否定するのだが。 |
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