vol.47 YSP成増の仲間たちと


吉見百穴を見学して古墳時代の人々の営みに思いを馳せ、
全日本モトクロス観戦で
ハイレベルなモータースポーツの生の迫力に触れる。
温故知新のショートツーリングを楽しんだ春の一日。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遺跡と全日本モトクロス観戦 ミスマッチを楽しむ春の休日

「だってタイヤが地面を離れちゃうんだよ」と難波恭司さんは言った。今回は、YSP成増の仲間たちと全日本モトクロスを観戦しに行く、と決定した時のことである。
「タイヤが地面に接地してるからこそ、ライダーとしてやれることがあるわけでさ。タイヤが地面を離れたら、何もできないよ」と難波さんは繰り返す。
 埼玉・川越のオフロードコース「ウエストポイント」に行く目的は「観戦」であり、難波さんには「参戦」を依頼しているわけではない。だが難波さんの頭の中には、モトクロッサーで走り回る自分の姿しかない。……バイク好きの見本のような人である。
 4月27日朝、一行は川越街道沿いのYSP成増に集結した。ここからウエストポイントに直行しては近すぎる。おそらく関越自動車道東松山ICまで足を伸ばし、古代遺跡・吉見百穴を見学することにした。
 読者諸兄も気になっていることだろう、「百穴」をどう読むか、が。一般的には「ひゃっけつ」と称されることが多いのだが、ツーリングを進め、地元の表記を見るにつけ「ひゃくあな」と書かれているではないか。
 独自調査によると「ひゃっけつ」と「ひゃくあな」が混在しているらしい。いずれにしても「穴だらけ」を表現していることに変わりはなく、YSP成増の面々も、なぜか若干照れながら各々呼びやすいように呼ぶばかりで、統一見解は得られないのだった。

 


 
 
 
  天然記念物のヒカリゴケが自生。残念ながら乾燥気味だったが、難波さんは「これぞまさに百穴ならぬ三ケツ」と大喜び。中学生レベル。   吉見百穴には第二次大戦中に掘られた地下軍需工場跡がある。航空機部品の製造目的だったが、本格的な生産開始前に終戦を迎えた。  


ロードとモトクロスには共通点がある

 吉見百穴の見学後、一行は川越街道を南下し、関東屈指のオフロードコース・ウエストポイントに向かった。
 昼休みが終わり、全日本モトクロス第2戦IA2クラス(2スト125cc以下または4スト250cc以下のマシンで競われる)のヒート2が始まると、あまりの光景に度肝を抜かれた一行は、思わず笑い始めるのだった。
「すんげぇ跳んでる!」
 モトクロスで驚かされるのは、短い加速区間ながら高々と宙を舞う、驚異的なジャンプだ。モトクロッサーは、物理法則を無視したかのような軽やかさで、空高く飛び上がる。
「速いライダーほど、飛距離を伸ばすために積極的に体を使ってるのが分かるね」と難波さん。確かに上位ライダーほど、ジャンプの踏み切り後に伸び上がるようにしている。体をサスペンションにしているのだ。
 そして国内最高峰IA1クラス(2スト250cc以下または4スト450cc以下のマシンで競われる)のヒート2では、全員の視線が#1ジュビロレーシングチームの成田亮選手のライディングに釘付けになった。さすがはモトクロスの本場アメリカで鍛え抜き、全日本で4度王座を獲得している男。明らかに違う!……何かが。
 難波さんの解説によると、「マシンを素早く倒し込んで、深々と寝ている状態からアクセルを全開にしてしっかりとトラクションをかけている。だから立ち上がりのスピードの乗りが他のライダーよりも早いんだ。ロードにも通じるライディングだね」
 野太いエキゾーストノートに包まれながら、ロードとモトクロスがガッツリと結びついた瞬間であった。

どんな状況でも精密にYZ450Fをコントロールする成田亮選手。「しっかり路面を捉えて加速エネルギーに変換し、速度を乗せているからマシンが安定しているんだ」と難波さん。

 
 

ヒート1で1位、ヒート2で2位になり今大会総合優勝を果たした成田亮選手。レース後のパドックで記念撮影に応じてくれた。次選は1位−1位での完全優勝を狙う。
 

間近で見られる白熱バトルをぜひ楽しんでください!
――――― Jubilo Racing Team 鈴木健二監督
ヤマハのトップチーム・ジュビロレーシングチーム監督の鈴木健二さんは、元全日本モトクロスのトップライダー。現在もエンデューロレースで活躍するバリバリの現役だ。「モトクロスはアクセルを開けて滑らせることで向きを変えられるから、修正しやすい。でもロードは、アクセルを開けるポイントを間違えると、はらんでどうにもならない。難しいですよね」と苦笑い。「迫力の走りを間近で見られるのがモトクロスの魅力。ぜひオフロードコースにも足を運んでくださいね!」
全日本モトクロスに行こう!
ジャンプ! スライド! 肉弾戦! 大迫力ライディングをコースサイドで満喫しよう! 全日本モトクロスでは、毎戦のようにハイレベルなバトルが展開している。「お気に入りライダー」を決めて応援すれば、いっそう盛り上がれるはずだ。

レース後のジャンケン大会で仕込みナシの勝利をもぎ取りゼッケンプレートを獲得した柳沢さん。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Map&GUIDE
まさに穴場の吉見百穴


6〜7世紀に作られた横穴墓。確認できる219基の横穴は、すべてお墓だったらしい。「倍以上あるじゃないか」という話だが、百穴の百は「たくさんある」という意味だそうだ。「当時の様子を想像するのが楽しいよね」と難波さん。

電話:0493-54-4541
営業時間 8:30〜17:00
入園料300円
年中無休

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Person in the
YSP
めざしているのはグレート・スタンダード
YSP成増
原元 直樹
店長


 「普通であり続けることって、結構大事じゃないかと思うんですよね」と、原元直樹店長は言う。その言葉を表すかのように、YSP成増の店内には、アメリカン、スーパースポーツ、ネイキッド、オフロード、スクーターと、各カテゴリーのヤマハ車がまんべんなく揃っている。確かに「ごく普通のバイクショップ」で、何かに特化している印象や、劣ったところをまったく感じさせない。
 原元店長自身のバイクの楽しみ方は、かなり先鋭化している。市販レーサーTZ250を所有し、たまにサーキットを走らせているのだ。レーサーならではのとんでもないパワーとクイックなハンドリングに酔いしれる。しかし、YSP成増にレース色はない。
「TZに乗っているのはあくまでも個人的に好きだから。ショップはビジネスですからね。考え方を割り切らないと、ケジメが付かなくなる」
 お客さんと仲良くなっても、友達付き合いをするべきではない、とキッパリしているのも、ケジメのひとつ。
「ある程度のところで、お客さんとの間には線を引いておいた方がいい、と考えているんです。バイクショップの経営は、私たちにとってはあくまでもビジネスです。お客さんにしっかり還元するためにも、健全な利益を上げるべきですからね」
 ショップを見渡しながら、「ここは私たちの『職場』ですから」と言う原元店長。返す刀で「そうは言っても、やっぱりバイク好きですからね。整備をするにも、自分の愛車を扱うのと同じか、それ以上に手をかけてしまうんですよ。責任感? そりゃあもちろん、ありますよ」と笑う。
 ホットな思いによって裏打ちされたクールなプロフェッショナリズムが、「偉大なる普通」をめざしている。


取材協力ショップ
YSP成増

東京都板橋区赤塚新町3の4の9 TEL:03-3977-5025
営業時間/10:00〜19:30(日祝/10:00〜18:30) 定休日/水曜・第3日曜

「バイクは趣味の乗り物です。ただ買っていただくだけではなく、喜んで買っていただけるように努力しています」(原元店長)

戻る
Copyright(C) YSP Members Club. All rights reserved.