第21回 「初夏の陸奥路を走る」

          八戸市より十和田湖方面へ

今回は平忠彦が初のタンデム走行を行う。舞台は青森から秋田にまで至る初夏の陸奥路。潮の香り漂う港町八戸をスタートし、奥入瀬川そして十和田湖へ。くしくも海辺から、その支流をさかのぼり源流を訪ねる旅。三陸の変化に富んだ海岸線の風景から、奥入瀬川沿いの幽玄な世界。そして濃い青に輝く神秘の湖。外輪山の高みより見渡した果てしなく連なる山々。まさしく懐深い自然の営為を肌で実感する豊かな旅となった。


海、川、湖。源流を目指し、深い自然の懐へ。

 今回は、このシリーズでは初めてタンデムライダーが登場する。もちろんタンデムシートに女性を乗せてのツーリングは今回が”初”。ちなみにこの件に関して個人的な感想を述べておけば、決して”悪くない”。
 さらに今回の参加ライダーは、私を含めると12人。掌握できるかな、とも思ったが、普段から走り慣れた仲間と聞いてまずは安心。
 さて起点はYSP八戸西。東北随一と言われる港町だけあって、八戸の街はいかにも海の匂いがする。八戸港へとマシンを向けると、いよいよ潮の香りが強くなった。
 今回は内陸部の十和田湖へと向かうルートを選択したのだが、八戸港から南へと向かう種差海岸あたりは、地元ライダーたちが推薦する絶好のツーリングコース。”ルートを逸れてでも”ということでとりあえず走ってみることにした。
 まずは八戸港からほど近い蕪島へと向かう。この周囲800mほどの陸続きの小島は、うみねこの繁殖地として有名。冬にこの地を訪れたうみねこが、春に産卵し、雛を育て、夏が終わるころにはまだ飛び立っていくという。我々が訪れた7月の半ばは、ちょうど雛が育ってきたところ。薄茶色の羽毛に覆われた雛の姿が目立っていた。それにしても多い。最盛期で5万羽近くに達するというから、ほとんどヒッチコックの世界。少し恐い。
 その蕪島から始まる種差の海岸線にマシンを走らせる。なるほど絶景。変化に富んだ三陸特有のリアス式海岸で、白浜かと思えば急に景色が巨岩の転がる岩場になったりと、眺めていて飽きることがない。海岸線の所々に広がる天然芝の緑も美しい。砲台跡で休憩し、海の景色を楽しんだ後、十和田湖方面へ向けて出発した。
 まずはその十和田湖に端を発する唯一の流れ、奥入瀬渓流へと向かう。焼山辺りを過ぎると両脇の木立ちが道路に迫り始める。すぐ横に川の流れが見えるようになると、道は緑のトンネルへと吸い込まれていった。
 マシンを止めて渓流の中州に立つ。空を覆う木々の若葉。その茂みよりこぼれ落ちてくるあくまで淡い光。木漏れ日、せせらぎの音、そしてかすかな鳥の声が紡ぎ出す静謐な空間。日頃味わうことのない幽玄な世界に、時を忘れてしばし佇む。
 そしてこの奥入瀬川の源流、十和田湖へ。この湖は以前訪れたことがあるのだが、あいかわらず神秘的な風情。これだけの観光地ながら、その深い藍色に人を寄せつけない、稟とした厳しさがある。
 典型的なカルデラ湖である十和田湖は、湖面に断崖の迫る、いわゆるすりばち型の形状。その外輪山に沿って道路が整備されており、景色を楽しみながら湖を一周することができる。途中、険しく曲がりくねった狭いところもあったのだが、そこはXJR1200が持ち前の安定性を発揮。タンデムながら、いつもと変わらぬ走行フィールを示してくれた。
 結局、子の口から入り、湖をほぼ4分の3周。発荷峠を越えて帰途へと着いた。帰りはいくつかの牧場を抜けるルートを選択したが、これが大正解。思いがけぬ快適なワインディングの走りで、旅を締め括ることができた。
 今回は海に始まり、川に湖。そして連なる山々に、開放感溢れる草原。短いながらも、東北の自然の奥深さを実感できる旅となった。

今回のツーリングコース
総距離約210Km

YSP八戸西→蕪島→種差海岸→砲台跡→国道45号線→国道102号線→焼山→奥入瀬観光センター→奥入瀬渓谷→子の口→十和田湖→御鼻部山展望台→発荷峠→牧草地帯→国道454号線→YSP八戸西

参加ライダー

協力ショップ
YSP八戸西

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