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懐深い北の大地。春の風吹く、美瑛の丘を行く。
人影もまばらな、美瑛駅のロータリーに歩き出て、ひとり伸びをする。深く吸い込んだ朝の冷気が胸の奥をなでる。澄みきった大気に佇む目覚めの街。なんだかソロツーリングの気分だ。
本来は岩見沢のYSP道央をスタートする予定だったのだが、前日に火急の用。やむなくツーリングの当日に北海道入り。ショップに寄ったのでは、予定を大幅に遅らせてしまう。そこで朝イチに旭川空港に降り立ち、ルート途中の美瑛駅でメンバー達と合流することにした。マシンはスタッフが運んでくれる手筈だ。
約束の時間は11時。空港からタクシーを飛ばし、9時過ぎには美瑛に着いてしまったから、朝の街並みの探索となった。それにしても、ここ数年の街並みの豹変には驚かされる。ちょっとしたテーマパークの面持ち。古の、北国らしい低く構えた民家も並びも、風情があったのだが。旅人の感情と言われてしまえば、そうなのだが…。
さて11時を少し過ぎたころ、ようやくメンバー達が到着。XJRが6台。まるでXJRクラブのミーティングだ。1200,1300とあるものの一車種だけというのも珍しい。ともかく、まずはCMの撮影地として有名な北西の丘へと向かう。
やがて右手に牧草地帯にスクッと立ち上がるポプラの木。自動車のCMで知られた“ケンメリの木”。マシンを止めて、のんびり木陰で話していると、向かいの駐車場に大型バスが停車した。観光客がゾロゾロと降りてくる。あわてて記念撮影を終え、次の“セブンスターの木”へ。その木の横に、またしても大型バス。やむなくパス。シーズンには、まだひと月も早い平日。何でこんなに観光客が、と思ったが我々にしてもビックマシンでドカドカと乗り込んでいるのだ。お互い様か。
ここで、改めて丘の連なりを眺めてみる。遥かな向こうに、黒い山肌に残雪の雪化粧も鮮やかな十勝連峰が見える。観光スポットばかりを探して気づかなかったが、実は雄大な眺めではないか。シーズンを迎えれば、畑ごとに色合いを変える鮮やかな“パッチワーク”も加わる。道内一の人気も頷ける。
そして、この春の景色も悪くない。生い茂る緑の牧草に、黄色い斑紋を付けるタンポポの花。風景の所々に、耕されたばかりの畑の、剥き出しの土の色。春の息吹、ダイナミズムが溢れる。数多な人の訪れを飲み込んで、なおその佇まいに微塵の揺らぎも感じさせない、懐深い大地の広がりがある。まさに美瑛には、凝縮された北海道の魅力があるのだ。
ついで牧場内のレストランにて昼食。一服後“ここからが今日のメインルート”という帰りの道に期待しつつ、サイドスタンドを撥ねる。昨年、完全舗装されたばかりで、地元ライダーすら知らない快適なワインディングがあるという。“ついでに”と回り道した、この終わらない直線は、次に控える峠道を、より印象的にしようというメンバー達の演出なのだろうか?
そこまで考えて、後はとにかく眠らぬようにと、ただただ早く道が曲がってくれるようにと、それだけを考えて走っていた。 |