豪壮にして厳粛。雨の峠を越え、霧の高野に入る
雲行きが怪しい。天気予報も芳しくない。カッパを積んで、大阪を目指したが、当日は当然の如く雨。ツーリングを始めての発見は、雨の多いこと。国内所構わず、よく降る。雨の走りにも、すっかり慣れてしまったが、体の冷える冬でなければ、大した問題ではない。雨が降ったら、空を見上げて微笑んでみればいい。そして“雨のツーリングも悪くない”と呟くのだ。
などど、自分に言い聞かせながら宿を出たのだが、集合のショップで安心してしまった。カッパを着込み、集うメンバーたちが、皆明るい。ツーリングライダーにとって、当日の朝というのは、決まって心躍るもの。雨など小事。何のことはない、一番の心配症は自分だったのだ。
メンバーも揃い、“では気をつけて”と出発。その直後、ちょっとしたアクシデントに遭遇。直線で、前を行くワゴン車がいきなりスリップ。右サイドへと大きく滑り、対向車線を塞ぐ形で停車してしまったのだ。対向車もなく事無きを得たのだが、“一歩間違えば”という状況。メンバー共々改めて気を引き締める。雨の走りで“注意しすぎる”ということはない。
さて暫く走ると道は和歌山県へと入る。紀ノ川が見えてくれば、橋本市。高野山の入り口として栄えた街を通過し高野山道路へと入る。
雨の山道。ここはタンデムということもあり、のんびりと行く。やけに切り返しの速いFJの彼が気になるが、そこそこ付いていっても、1300になって安定性を増しているXJRだから、十分快適。快適過ぎてリヤシートの彼女が居眠りをしないか心配なくらい(実際帰りには随分メットをコツコツやられたけれど…)。
徐々に深まりゆく山々の景色に見とれていると、突然巨大な建造物に遭遇。豪壮を誇る、高野山の総門、大門が我々を迎えたのだ。マシンを駆って、お気軽に参道を上がってきてさえ、その荘厳な姿には感銘を受けてしまう。ましてや、徒歩で詣でた古の参拝者たちは、この大門に遭遇していかなる感動を覚えたことか。何となく、その宗教的感動に触れた気がしたが…。
それにしても、真言宗の総本山金剛峯寺をはじめ、大小120もの宗教建造物が立ち並ぶ“仏都”高野山の佇まいは圧倒的。おりしも“悪天候に恵まれ”山中に霧が漂う。いやでも神秘的な雰囲気で、この千年も前に空海が開いたという真言密教の修禅場(案内所でパンフをもらった)について、ちょっと勉強してみたくなった。
やがて、お昼を過ぎる頃には、何とか霧も晴れてきた。“走り”に関しては本来の目的だった高野龍神スカイラインに乗り入れる。もっとも雨こそ止んでいたが、路面状況は悪い。ここは景色を楽しむことに徹し、紀州最高峰護摩壇山の稜線から、眼下の霧中に原生林を抱く山々の連なりを眺める。
それにしても素晴らしいワインディングだ。天気が良かったら、とも思ったが、悪天候のお陰で、通りすがりの観光客より、一歩だけ高野山に踏み込めた気もする。ここは欲張るまい。“雨のツーリングも悪くない”と今度はリヤの彼女に呟いてみた。 |